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目撃内容(番外編) その21
「人体の不思議展」
(2003年9月6日〜12月28日/好評につき2004年2月1日まで開催 東京国際フォーラム1階)
おすすめ度★★★
展示終了
『匂いもなく、弾力性に富み、手で触っても汚れない!人体の神秘と未知なる世界が手に取るようにわかる。本物の人体「プラストミック」解剖標本を一般大公開!』ちらし抜粋。
生前の本人の意思、遺族の了承を得て献体された人体をプラストミック製法と言う方法を用いて常温保存可能な、まるで精巧な蝋細工の人形標本のように加工して作った貴重な人体標本の展示会。プラストミック製法とは献体から水分を抜き、樹脂を染みこませて作るらしいです。従来のように壊れやすくもなければホルマリン漬けにしなくてもいい画期的なものなんだそうです。展示されたのは全身解剖標本16体、それぞれの個別の器官が160ほど。で、もちろん、展示物はすべて本物のヒト科ヒト。しかしぜんぜん生々しくないのです。蝋人形と一緒くらいの感覚で見れてしまいます。そこにあるのは「ヒト」ではなく標本であって、精神活動を伴わない器としての「ヒト」本体はかくも素っ気もない「器官」だったのだなあと思わずにはいられません。人間、生きて考えて感じて、それこそ喜怒哀楽があってなんぼのもんだと、しみじみ命の尊さ、生きていることのすばらしさを感じさせられました。

連休中の日曜日だけあってすっごい人出。お友達同士カップル家族連れで会場内は標本よりも生きている人間の熱気でムンムンで気持ち悪い。どれにも人だかりができて押すな押すなの大盛況。じっくりなんて見ちゃいられません。とくに一番最初に目に入る弓矢を引く人体標本はイナゴの大群に襲われたように人だかりでき、上半身しか見えません。下半身がどうなっているのか結局わからずじまいだったけど、そんなことよりどうやって弓を引かせた筋肉の動きを献体にとらせて加工したのか興味ありです。目線もばっちり弓の先を見据え、口元もぎゅっと引き絞っているんですよね。まるで弓引いた姿のまま化石みたいに固まったみたいで見れば見るほど不思議でした。
標本を見ながらどこぞのカップルの女性が「ジャーキーみたい」って言ったのを小耳に挟んだけど、まさにそのとおり。見た目はベーコンとかジャーキーとか燻製とか、そんな感じ。ものすごく保存のいいミイラとも言いましょうか。すごいのは血管から内臓から神経から筋肉から本当に手にとるようによくわかる。ここの血管が上に行ってこう巡って・・・なんて状態です。頭部をスライスして(CTスキャンの実写版みたいなもの)にして見せたのも、全身をスライスして全断面図を見せたものなどという学問的には非常に貴重な標本もありました。ここまで思い切られると、気持ち悪いを通り越してただただ驚嘆するばかりです。ただ、もとが本物だけあって、各標本の顔が違ったり、髭やまつげが生えていたりするのはどうも、最後まで慣れませんでした。
展示室の最後の部屋では、本物の標本に触れる(無制限、好きなだけどうぞ)、また脳の重さを体験できるコーナーがありました。ちなみに脳の重さは思ったよりずっと軽かったです。

さて、私が今回この展示会に行ったのは、もちろん、乱歩がらみ。悪魔の紋章でもおなじみの「衛生博覧会」の現代版ということで。衛生博覧会がどんなものだったか知る由もないのですが、乱歩の小説、当時の展示物の写真などみると相当グロかったようです。ほんものの献体を使ったプラストミック標本より、昔の蝋細工の疾病標本のほうが気味悪いのは間違いないように思えます。
以下、乱歩の悪魔の紋章よりの抜粋。
『場内の一半には医療器具、一半には奇怪な解剖模型や、義手義足や、疾病模型の蝋人形などが陳列してある。(略)毒々しい赤と青で塗られた、四斗樽ほどもある心臓模型、太い血管で血走ったフットボールほどの眼球模型、無数の蚕がはいまわっているような脳髄模型、等身大の蝋人形をから竹割りにした内臓模型、長く見つめていると吐きけを催すような、それらのまがまがしい蝋細工の間を、三人はわき目もふらず歩いていく。(略)恐ろしい病毒の吹き出物、ニコチンやアルコールの中毒で、黄色くふくれあがった心臓模型などは、健康者をたちまち病人にしてしまうほどの、恐ろしい心理的効果を持っている。』 
幸いにも(?)、現代の衛生博覧会・プラストミック標本に後ろ暗い雰囲気やおどろおどろしさは微塵もなかったです。ひたすら医学的好奇心を刺激させられる健全なものでした。

この展示会、今年いっぱいやっていますので興味のある方はどうぞ。  
2003年11月2日


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