目撃内容その18 「明智小五郎対怪人二十面相」 おすすめ度★1/2 |
||||||||||||
時代設定は日本が終戦を迎えて3年後。怪人二十面相から、「国立博物館の宝物をすべて無償にていただく」という予告状が届けられるところから事件は始まる。国立博物館での事件を皮切りに篠崎家のノマロフのダイヤ、相川家の重要機密書類と次々と二十面相はターゲットを広げ、明智探偵に挑みかかる。しかしその挑戦の仕方は知恵比べを楽しむという類の物ではなく、明智に対する拭いがたい怨恨から来るものであった。二十面相と明智の間に隠された過去とは? 2人の間に絡む「文代」という女性は一体何者なのか。壮大な(制作費をかけた)世紀の対決が繰り広げられる! ・・って感じかな。最初に結論から行ってしまうと、これはこれとして割り切ってみればそれなりに楽しいのではないでしょうか、と、言うことです。でないと「違う!二十面相はこんな男じゃない!」と叫びだしかねませんので。 さて。 破格の制作費をかけた割にちゃちな画像処理&セットでした。CGもなんか安っぽいし、たけしのワイヤーつるしてるのがバレバレのところが何ともチープ。一体どこに金使ったんだろうと真剣に悩む。 国立博物館と旧前田邸を使ったのは評価するけど、どうせだったら表慶館の方を使って欲しかったなあ。(このころは既に本館がメインだったとは思うけど、表慶館の方が二十面相の舞台にぴったりだから) 事件は「怪人二十面相」「少年探偵団」「妖怪博士」「黄金の怪獣」&青年向けから「猟奇の果て」と「魔術師」のつまみぐいをした模様。 サーカス、落とし穴、地下室、罠がちゃんと出てきたのはなかなか少年探偵団っぽくて良かった。ただ、穴に落ちるのは小林くんではなく明智探偵で、水攻めがなかったのが少し残念。 結局、二十面相の遺恨ってのは、蛭田博士の人体実験で、自分の顔を大嫌いな「明智」そっくりさんにされたことと、「ミサ」を明智に横取りされたことらしいです。ちょっと筋違いの恨みだと思うけど。 大嫌いな明智顔にされて自分の顔を追い求め、いくつもいくつも仮面を被るうちに、自分でもどれが本当の自分なのかわからなくなった自己喪失の二十面相。彼は喪失した自己を取り戻すため、明智を執拗に追いつめ、命さえも奪おうとする。(しかし、蛭田博士が二十面相の顔を明智に整形する理由がわからない。明智にすると戦局に対してなにか進展でもあるというのだろうか。蒋介石かスターリンにでもした方がよっぽど益があると思うが。尤もそれには中国語、ロシア語が堪能であるという必要不可欠な条件をクリアしなければならず、顔を作り替えるよりはるかに難問かも。 結局、内容的には最初に書いたとおり、「これは乱歩の書いた明智と二十面相とはちがうもの」と割り切ってみればいいと思う。そう思えば寛大な気分で見ることができます。 と、いうことで、せっかくラストに二十面相が生きているかも知れないと言う余韻を残したのだから、続編も作ってもらいたいです。 手始めに明智小五郎対怪人二十面相R、帰ってきた二十面相、口笛を吹く二十面相、二十面相麹町旅情、二十面相ハイビスカスの花、僕の二十面相さん、そんで、さらば怪人二十面相、最後に二十面相よ永遠に、でどうだろう。 田村正和=明智小五郎 ビジュアル的にはぴったりだと思う。戦後の明智さんは化人幻戯でもあるように50歳を越えてなおもダンディの極み、痩身に黒い背広、もじゃもじゃ頭には白い物が混じるがなおも若々しい。感じ出てると思う。 ただ、しゃべり出すと私にはどうしても古畑任三郎に見えて困った。殿村探偵の正体を暴いていくシーンで、いつ照明が落ち、スポットライトを浴びた明智が謎解きを始めるかと期待してしまった。そう思ってしまったが最後、田村版明智小五郎は、「古畑任三郎、潜入捜査」以外のなにものでもなくなってしまったのは痛かった。(今泉くんまでいるし) たけし=二十面相 これほど原作からかけ離れた二十面相がいままであっただろうか〜〜〜!! いくら「これはあの二十面相じゃなくて別の二十面相なんだ」と言い聞かせても、違和感が拭いきれない。 二十面相は30前後(多く見積もっても〜37、8)の、髪の毛を縮らせたすらっとした無髭の好男子のはず。ぜんぜん違う! みてくれが似てないだけでなく、性格がまた正反対。二十面相ははっきり言って明るい性格なのだ。イヤなことも一晩寝るとケロっと忘れ、気分爽快リフレッシュ。羨ましいくらいの極楽とんぼなのだ。エンターティナーの愉快犯なのだ! そりゃあ、明智さんにはかなりの執念を燃やしてるけど、それは執念と言うよりは執着心。自分に注目して貰いたい、自分のやることを見て欲しい、明智さんに構って貰わなければ自分の人生始まらないっていうか、ほとんど生き甲斐みたいなもんなんです。口では憎いだの、生かしちゃおかなかないだの言ってるけど、あれは単にだだをこねているだけ。かわいいもんだ。だいたい、怪盗紳士の彼は盗みはするけど決して人を殺さないのが信条のはず。明智の妻を爆死に追いやるなんて考えられない。そんなの二十面相じゃない。ついでに、二十面相の本名は「中里」なんかじゃない。だれだよ、それ。 とにかく、こんな二十面相、いやだ〜〜〜〜〜!!! 文代=宮沢りえ 吉永文代と明智の亡き妻ミサの二役。「明智の亡き妻」って設定だったら、「ミサ」なんて無理矢理作らなくても原作通り「文代さん」でいいんじゃないかなあ。文代さんは戦後は病気で療養所送り(原作通り)、そのまま死んだことにしちゃって、そのうり二つの娘の名に「ミサ」を使ったほうがつじつまがあってよかったと思うけど。 で、この吉永文代さんは中国大陸で天涯孤独となり、二十面相に拾われ怪盗団の仲間に入る。二十面相の復讐に加担するが、途中で二十面相に見捨てられる薄幸の娘。オリジナル・キャラです。このオリジナルに宮沢りえははまっていたと思う。いかにも不幸そうな雰囲気がいい。一度は明智側に寝返ったものの、二十面相の苦しみを知って(二十面相って基本的に苦しまない人なんだけどなあ。おかしいよなあ〜。「くっそう〜〜!覚えてろ!」という気持ちを楽しめるおちゃめな性格が本来の持ち味なのになあ〜。)二十面相の元に戻っていく。結局、このドラマって文代と二十面相のロマンスだったんじゃないかと思うしだい。 小林少年 他にいなかったんですか? でも舌足らずなしゃべりはそんなにキライじゃない。これでもう少し顔が利発そうでリンゴほっぺできりっとしたかわいらしい美少年だったらなんにも言うこと無かったのだが〜。 相川少年やった子(石膏像に閉じこめられた少年)のほうが小林君向きだったと思うのは私だけ? 小林団長というよりもチンピラ別働隊の隊員みたいな小林少年だった。 殿村探偵=山口祐一郎 いやあ、かっこいいですねえ。(原作の殿村探偵はせむしの醜い男なので「?」なのだが) 私としては「蜘蛛男」の畔柳博士やらせたいくらい。胡散臭そうなところもいいです。そっちのほうが雰囲気出てる。 これも二十面相の変装だったわけだが、わたしゃ山口で二十面相やって貰った方がよっぽど精神衛生上よかったような気がする。 あんな背の高い男にどうやって「たけし=二十面相」」が変装しているのかと興味津々だったが、すごいシークレットブーツ着用していた。感動的に細かい演出だった・・・? 中村警部=伊東四朗 少年探偵団ものにちゃんと中村警部を持ってきたのは評価できます。伊東の中村警部にはまったく不満はない。っていうか、別に誰がやってくれても良かった。 蛭田博士=西田敏行 これも本来なら二十面相の変装の一つ。独立した個人として出てくるのは違和感がある。しかも中国大陸で人体実験なんかしてるし。敵国首脳とそっくりの顔にしたスパイをすり替えて戦局を有利に導こうとする発想は面白いけど、明智の顔を中里(二十面相)に移植する趣旨がどうしてもわからない。二十面相の遺恨の種を作り出すためにに無理矢理ひねり出した感じ。 西田敏行の役作りは笑っちゃうくらい作りこんであり、やっぱり個別の人物ではなく、二十面相の変装のひとつにするべきだったと残念に思う。 キャスト替えてくれ〜〜〜〜〜っ!! 後記:このドラマで使われた二十面相の本名、「中里」は一体どこから持ってきたのか謎だったが、西村京太郎著「名探偵が多すぎる」に登場した二十面相の偽装名が「中里(←これがわかってもネタバレになってないのでご安心を)」だったことを発見。もしかするとこのあたりからいただいてきたのかなと思うのも面白いかも知れない。 |
||||||||||||
2002年8月27日 |